講師:伊納達也(ビデオグラファー)
一部 ビデオグラファー宣言から1年 〜ビデオグラファーを取り巻く今とは?〜
二部 伊納先生による映像評価 〜Eスクールの映像制作と評価コメント〜
授業が終わるとすぐ飛行機で撮影に向かう伊納先生。
今回はレクチャー他に、その撮影機材を見せていただきながら、普段どのように撮影しているのか擬似的に再現していただいた。
ビデオグラファー
一人で撮影編集をすることが強調されることが多いが、大事なことは「少人数マルチタスク」。
今までディレクション・撮影・編集など専門家によって役割が細かく分業されていたけれど、あれも分かるけどこれもできる、というような「少人数マルチタスク」で制作するスタイルが増えている。
そんな映像業界の今、ビデオグラファーたちが集まる【VIDEOGRAPHERS’ NIGHT】の信頼が厚い!最先端の業界動向やノウハウをシェアする場であるが、ビデオグラファー以外の参加者も。
ウェブメディア系:BuzzFeed編集長等
テレビ制作系:民放・NHKディレクター
例えば、海外のスポーツドキュメンタリーなど、テレビ業界のノウハウでは対応しきれないことが増えている。
映像制作系メディア:ビデオサロン編集部
作曲家、デザイナー、ドローン専門家
ブロガー、Youtuber
映像業界に属していなくても、何かを発信したくて映像を勉強したい人が増えている。
これまでの【VIDEOGRAPHERS’ NIGHT】

2015年
9/23 ビデオグラファーの戦い方
11/26 制作フローのシェア
2016年
1/25 最近気になっている映像は?
4/19 ウェブメディア映像領域
5/11 ライティングと音声
6/3 VR時代への準備
6/30 ワークスタイルシェア
8/3 海外撮影
9/14 京都のビデオグラファーたち
9/17 撮影許可とライセンス
9/26 長野のビデオグラファーたち
最先端をいくビデオグラファーが、今知りたいこと?
傾向① これまで専門職が持っていた知識を自分たちでも理解する
プロダクションの制作進行・マネージャー:撮影許可のノウハウを勉強
写真家の技術:海外への機材持ち込み
自分たちの機材を海外で使うことから、その意味でスタイルの近い写真家の技術を知る必要があった
これまで映画や大きなCMでは、現地で機材やアシスタントを調達することが多かった。
照明技師:インタビューライティングの基礎
録音技師:音声収録の基礎
やはり細かいところはプロに任せることもあるが、簡単なところや基礎は学ぶ必要があった。
傾向② 映像の新領域への挑戦!(ドローン、ジンバル、VR)
ここ5年前までなかったような、最先端な撮影方法をいち早く挑戦できるのもビデオグラファー。ドローンで撮影するとしても、法律や制限も知らなければならない。
ビデオグラファーとして続けて行くのは大変?
理由① Web映像業界の傾向
映像業界では映画、テレビ番組、TVCMだけでなく、Webコンテンツが充実しはじめている。
そうした流れから、Webコンテンツに特化した企業が現れている。

LOCUS
テレビやTVCMではなく、WebCMに特化した映像制作会社
Vibbar
クラウドソーシングの会社。映像制作のフリーランスと企業をつなぐプラットフォームの役割を果たす。
クライアントは、フリーランスであるビデオグラファーに直接依頼するよりも、上記のような企業にWeb映像制作を依頼する傾向がある。
フリーランスに仕事を直接依頼するのは、企業にとってリスクが高い。それは途中で逃げられたり、ライセンスあるなしや、事故したときの保険などが主なリスク要因となる。そのためクライアントは、制作ワークフローを一括して任せられる企業に依頼する傾向がある。
ビデオグラファー宣言から一年の大きな課題は、
需要度が高まるWeb広告などのWebコンテンツと、それを扱うビデオグラファー業界を確立する必要性と、そしてクリエイター育成システムをつくっていくことである。
そうした状況のなかで、ビデオグラファー伊納先生は、ウェブサイト「Vook」と協同でVIDEOGRAPHER’S NIGHTを運営している。

Vookは、映像制作者のための情報共有プラットフォーム。ここには、ビデオグラファーの技術やノウハウがつまっている。特に、REDデジタルシネマカメラやVRは、日本人ユーザーが限られているため、日本語で情報共有できるのは貴重である。
理由② フリーランスでは国民健康保険を払うのは高い
文芸美術国民健康保険というものがある。
これが適用される協会がいくつかあるが、ビデオグラファーはどこに属するのか?
それが「日本ネットクリエイター協会」
本名、住所、クリエイター名、代表作品、掲載されているサイトのURL、具体的な業務内容、入会の目的、以上を入会申込書に記載するだけ。
対象者は、ボカロP、歌い手、絵師、動画師、ゲームクリエイターなどのネットで活躍するクリエイターたちが含まれる。
このように、文芸美術国民健康保険の視点でみると、ビデオグラファー業界がいかに確立していないかがわかる。
新発表機材から見るビデオグラファー最近の傾向
一眼レフで写真も動画も撮影しようという流れから、用途によってカメラを選べるようになっている。それぞれの撮影スタイルに特化した機材がでてきている。
傾向① 一眼レフ(Canon・Nikon)と映像機材が再び分離している傾向
一時期、写真も映像も撮れるという流行りがあったが、写真用機材・映像用機材というように再分離の傾向がある。
ただし、Panasonic GH5, GH8、Fujifilm X-T2などの「ミラーレス」は、映像でも使える機が増えている。

傾向② オールラウンダー1型センサー動画マシンの登場
Panasonic FZH1、Canon XC15
特徴は、センサーのサイズが「ビデオカメラより大きいけど、写真カメラより小さい」。センサーに適したレンズがある、内蔵NDフィルターがついている、データ収録が豊富など、動画に使いやすくつくられている。

傾向③ ドローン・ジンバル大戦争中
ドローン
DJI Phantom4 VS GoPro KARMA

ジンバル(移動しながらの撮影でも、手ぶれを補正してくれる機材)
DJI OSMO VS GoPro KARMA Grip

どちらも一般の人でも使えるようになっている。
傾向④ VR
Kodak Pixpro 4KVR360
Nikon Keymission 360
こちらも一般の人でも入手でき、360度の動画撮影ができるようになった。

また、VRの用途として、報道の現場で注目されている。写真や動画では、よくもわるくも意図的に切り取ってしまう。VRでは視聴者も現場にいる感覚となるので、より客観性を保つことができる。例えば、シリアや中東での難民問題の報道で使われている。

報道、ゲーム、アダルト業界の三つが大きくVRに参入しており、他の業界ではあまり事例がない。そのため、撮影方法はかなり難しいが、可能性は広がっている。
このように、これまでにない新しい機材によって、新しい撮影方法と表現方法が広がりはじめているのだ。
世界の広告、最近の動向
広告のクオリティというよりも、プロジェクトの面白さや社会貢献性を紹介する広告が多くなってきている。そして、取り組みの魅力を伝える媒体として映像・Webコンテンツが流行りをみせている。
例えば、ビール会社の映像広告。ビールが飲まれなくなってきた中、ビールの残りカスが原料にすれば、ガソリンに生まれ変わるというプロジェクトを紹介した。そのため、ビールを飲めば飲むほどエネルギーが生まれる。

このように、企業の商品広告が基本にあるが、企業のコンセプトや姿勢を紹介する広告が評価されはじめている。この流れは、「パーソナルストーリーからソーシャルインパクトヘ」とも言える。つまり、パーソナルで感動的なストーリー広告よりも、社会貢献性の高い広告が最近では評価されているのだ。
そして第二部では、Eスクールで制作した映像について、伊納先生からコメントしていただいた。
・制作進行の仕事が映像クオリティをあげている。例えば、市役所や警察への撮影許可など。
・Youtubeのはじめに流れる広告もつくってはどうか?
また、After EffectsでCG編集ができるプラグインや、クオリティの高いサウンドが購入できるサイトなどを紹介していただいた。このように、映像制作で自立したい方にとって有益な情報を学ぶことができた。