11月12日【ドキュメンタリービデオグラファー】

講師:岸田浩和(ビデオグラファー)

一部 撮るということ

二部 初めの一歩は「好きな映像を見ながら真似る」

 

ドキュメンタリー系ビデオグラファー

これまでEスクールは、新たな環境を構築するビデオグラファーの様子を追ってきた。

今回、講義された岸田浩和さんは、様々なジャンルがある映像業界でドキュメンタリーに特化した映像を制作するビデオグラファーである。

 

岸田流 「職業、ビデオグラファー」とは?

何度か講義で来られているビデオグラファーの伊納さんは、広告系のビデオグラファーだとEスクールで定義している。しかし、今回来て頂いた岸田さんは、どちらかというと「記者」「ライター」のような仕事スタイルが伺えた。下記の作品例で紹介する。


sunflowermovement

台湾 SunflowerMovement                    −ジャーナリズムイノベーションアワード2015(JCEJ)決勝プレゼン入選作−

例えば、上記リンクが貼られている「台湾 SunflowerMovement」という作品は、2014年台湾で起きた「ひまわり学生運動」を捉えたドキュメンタリー作品である。この映像自体、政治的な意味合いが大きく含まれていたので日本国内ではあまり大きくメディアに取り上げられることは無かった。しかし、実際の現場で何が行われているのかを突き詰めようとした岸田さんは8時間悩んだ末、台湾に乗り込み、この映像を撮ってきたという。


岸田さんを動かしている原動力がある。

それは、「興味のあるところへ出かけていって映像を撮る」ということ。つまり、「映像を撮りたいではなく、撮りたいものがそこにあるから撮りにいく」というスタイルだと話す。

先程のような海外作品をいくつか撮られている岸田さんは、最近アフリカのナイジェリアへ撮影に向かった。海外に撮影となると「外国語が喋れない」「知らない土地」などの不安があり、簡単に行こうと決心のつくものではないはずだ。しかし、岸田さんのようにドキュメンタリー系の映像作家にとって単純な不安要素というのは、「逃げ」でしかないと話す。この根本にあるのは先述した通り「撮りたいものがそこにあるから撮りにいく」ということが原動力だということに繋がる。


海外での活躍

先月の10月23日_アメリカ_ニューヨークで行われた「NYC FOOD FILM FESTIVAL 2016」にて、岸田さんは「最優秀短編賞」と「観客賞」を受賞した。タイトルは”SAKURADA Zen Chef”

この2つの賞が意味する事はとても重要な事だ。まず、「最優秀短編賞」とは、短編映像部門で審査員が最も高く評価したという意味がある。そして「観客賞」というのは、映像を視聴した観客の票が最も多く集まったという意味がある。つまりは、その会場にいた人々が岸田さんの作品を最も高く評価したのだ。

この作品は、今も動画サイトやインターネットには掲載されておらず完全未公開の映像作品となっており、一般で視聴可能になるのは、まだ未定とのこと。

その作品を一足先にEスクールで視聴する事が出来た。

これは、2015年に閉店したミシュラン2つ星を持つ京都の高級料亭最後の100日間を追った作品で、特に最期を迎える瞬間の画が岸田さんのこだわりとして深く心に突き刺さるようなものがあった。その映像には、エフェクトやテロップなどの無駄ものは一切無く、ただ流れるような画繋ぎと、人の表情と心を捉えているようなアングルだけで構成されており、日本人が感じる「和の深み」というもの醸し出していた。


初めの一歩は「好きな映像を見ながら真似る」

このような規模の大きい映画祭で、最優秀短編賞を受賞するまでに多くの歳月が掛かると一般的には考える。しかし、岸田さんの場合はカメラを持ち始めたのが2011年、今年で6年目の映像作家だ。

これを聞いて誰もが驚くそうだが、岸田さん自身が有名な映像作家として独立したのには、二つのポイントがあると考える。一つは、撮りたいものがあるから撮りにいくという「目的のあるバイタリティ」。もう一つは、初めの一歩を「好きな映像を見ながら真似る」というスタイルにしたことだ。

作品自体を諸々真似るのではなく、「こういうアングルいいな」であったり、「こういう演出があったのか」など多岐に渡る。良い見本を色々と吸収して、自分の型に合わせるということが基本であると解釈した。それが、バイタリティに繋がり、技術的にも向上するという良いサイクルが生まれるのだと考える。

今回のビデオグラファー講座は、作品の作り方から、作品を撮るという事は何かということを考えさせられるような講義であった。